海外の写真サイトやフォトグラファーの写真を見ていると、波打ち際が雲海のように見える写真や、青空に流体のような雲が流れている写真を見ることがあるのではないでしょうか。
けっして肉眼では見ることができない光景を表現しているそれらの写真。
一体どのような技を駆使しているのか不思議に思うこともあります。
フォトショップ(Photoshop:アドビというソフトメーカーが販売しているソフト)などの画像加工ソフトを使い、パソコン上で絵作りをしているのでは?という疑問も出てくるかもしれません。
※なかにはフォトショップを使い、白紙の状態から色を重ねたり、ソフト上のフィルター効果を駆使して風景写真っぽい画像を作るクリエイターもいますが多くは写真とは異なる分野の作品となります。
でもそれらの多くは実際の風景を撮影時のちょっとした工夫で撮っているんです。 そこで使うのがNDフィルター。
この記事では、NDフィルターの検討をはじめたばかりの方にもわかりやすいようにできる限りかみ砕いてご紹介していきたいと思います。
こんな写真が撮れます
NDフィルターを使って撮った写真
滋賀県:琵琶湖 | ||
静岡:田貫湖 | 埼玉県:渡良瀬遊水地 | |
北海道:美瑛 |
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NDフィルターとは
NDフィルターの「ND」とは、Neutral Density(ニュートラル・デンシティ)の略で、直訳すると「中立な濃度」という意味になります。 別名、減光フィルターとも言い、こちらの呼び方の方がわかりやすそうです。 減光という名の通り、レンズに取り付けるサングラス😎だと考えて間違いありません。 後述する「濃度」の違いにより、レンズに入る光の量を調整し狙い通りの写真を撮ることができるありがたいツールです。
減光量
NDフィルターには種類(濃度の違い)があり、おのおの取り入れる光の量が違います。
- ND2 →光量1/2・絞り段数1段・透過率50%
- ND4 →光量1/4・絞り段数2段・透過率25%
- ND8 →光量1/6・絞り段数3弾・透過率12.5% 等
こちらの内容になると、専門的な用語や理解が必要になるので別の機会にご紹介します。
形状について
NDフィルターには、大きく角形タイプと丸形タイプの2種類があり、減光する目的は同じでも使い方やサイズ、なにより価格に大きな違いがあります。 イメージとしては、プロやハイアマの多くは角形タイプを使用する場合が多いと思っていただければ間違いないと思います。 NDフィルターの種類
- 角形タイプ・・・プロやハイアマ向け
- 丸形タイプ・・・初心者~中級者向け
角形タイプ
専用のレンズホルダーをレンズの先端に取り付け、そのホルダーに角形のフィルターを差し込んで使うタイプです。ホルダーをセットしてしまえば後は状況にあった角形のレンズをホルダーに差しかえて使うことができます。 レンズのサイズにかかわらず使うことができるのも角形タイプの特徴です。 一般的に使われているレンズのサイズは、62mmや72mm。大きいものでも77mmや82mmあたりのサイズがバリエーションとしては多いかと思います。 通常、82mmを超えるレンズにはフィルター径のネジキリは無いため、大型のレンズでNDフィルターを使う際には角形タイプの一択となります。 広い空や広大な風景を撮る際に使われることの多い広角レンズ。広角になるほど、レンズの前玉(レンズ全面の球面)が水晶玉のようにレンズ本体からはみ出る構造になりますが、このような前玉が飛び出しているレンズ(通称、出目金レンズ)にも使うことができます。 そのほか、一枚のNDフィルター盤面の濃度がグラデーションのように加工されているハーフNDや山型加工されたグラデーションフィルターなどの特殊なNDフィルターを選ぶことができます。 周辺減光がおこりにくいのも角形タイプの特徴です。 レンズより大きなフィルターを取り付けることで画像の四隅に現れがちな影(減光)が写りこみにくくなります。
角形タイプの特徴
- 専用のフィルターホルダーとセットで使う
- レンズ径が82mmを超える大型のレンズにも使うことができる
- 前玉が飛び出したレンズにも使える
- ハーフNDなど特殊なフィルターを選ぶことができる
- 周辺減光がおこりにくい
注意ポイント
- フィルターは単体では使えず、フィルターホルダーとセットで使う
- 丸形と比べると価格が高い
- 丸形と比べると種類が少ない
丸形タイプ
レンズの先端にねじ込んで使うタイプです。専用のホルダーは使いません。 薄くてコンパクトな形状なので収納しやすく持ち運びもラクにできます。
NDフィルターのサイズは、持っているレンズの径に合わせて同じサイズを準備する必要があります。
後ほどご紹介するレンズの濃度についても、ND2のような明るいものから、ND1000を超える濃いものまで様々な種類が販売されています。
Kenko NDフィルター ND400 プロフェッショナル 77mm 光量調節用 177235
丸形タイプの特徴
- フィルターを単体で使うことできる
- コンパクトで持ち運びがラク
- サイズや濃度のバリエーションが豊富で多くの種類が販売されている
- 角形と比べると安価
- レンズ径82㎜までに対応
注意ポイント
- レンズのサイズごとに揃える必要がある →ステップアップリングで対策可能!
- 使い方によっては周辺減光の原因になる
角形タイプと丸形タイプの違い
角形タイプと丸形タイプ、それぞれの特徴について整理します。
角形タイプ | 丸形タイプ | |
価格 | 高い | 安い |
大きさ | 大きい | 小さい |
取付けの手間 | ちょっと手間 | 簡単!ねじ込むだけ |
メリット |
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デメリット |
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濃度の種類 | 濃度の低いND2から濃度の高いND10000まで、どちらのタイプも選択が可能 |
どっちが良いの?
これからNDフィルターを使ってみたいと思う方には迷わず丸形タイプをおすすめします。
プロのカメラマンや本格的に撮影をされる方の多くは角形タイプを使われるケースが多いようです。
理由は、
- 大口径のレンズにも使える →丸形は最大で82mmまで
- 出目金レンズにも使える →丸形は出目金レンズには付けられない
- ハーフNDなど種類が豊富 →ハーフ機能があるのは角形だけ
- 精度の高いレンズが比較的多い
上記にあてはまる場合は、角形レンズの一択となりますが、どうでしょう
入門者~ハイアマクラスの私たちにはあまり必要性が無いように感じます。
これらの条件が不要な方(多数派)や、これからNDフィルターを使った撮影を始めてみたい方には丸形をおすすめします。
ちなみにですが、
角形タイプで撮った写真と丸形タイプで撮った写真は見分けはつきません。
※ハーフNDフィルターの効果を狙ったものは別
同じクオリティの写真が撮れます。角形か丸形か迷う前に撮影技術を身につけた方が理想の写真に近づけます。
私の場合は丸形タイプのみでこれまで撮ってきました。
経済的な理由はもちろんですが、移動が多いため持ち運びのしやすさがなにより。
今の時点で丸形タイプを使う上で不満や不便を感じることはありません。
丸形タイプのNDフィルターについて詳しく紹介します
サイズ (丸形タイプのフィルター径)
入門者~上級者まで幅広く使われている丸形タイプのNDフィルターについて整理していきます。
丸形タイプのNDフィルターには、レンズ径に合わせて様々なサイズのNDフィルターが販売されています。
各メーカーもレンズ径82mmまでは大抵ラインナップは揃っています。
基本的には、お使いのレンズの径に合ったサイズのNDフィルターが必要となります。
レンズ本体には大抵レンズ径が記載されています。
例)Φ62㎜
レンズ本体に記載がない場合は、レンズメーカーのホームページで確認ができます。
レンズキャップの裏側に記載されている場合もあります。
ステップアップリング
ステップアップリングとうパーツがあります。
異なるレンズ径のフィルターを取り付けられるようするアダプターのことです。
例えば、62mmの径のレンズに77mmのNDフィルターを付けたい場合に「62-77mmのステップアップリング」を取り付けます。
ステップアップリングを活用することで、1枚のNDフィルターを異なるサイズのレンズで使いまわすことができます。
そしてNDフィルターのサイズを統一することで、経済的であり荷物の軽減にも直結します。良いことしかありません。
ステップアップリングのもうひとつの活用方法に、ケラレの防止があります。
レンズと同じ径のフィルターを使うと写真の四隅に影が写りこむ事があります。
この影のことをケラレと言います。
ケラレの原因は次の通りです。
- 77㎜や82㎜などの広角ズームレンズを使っている
- レンズプロテクトやPLフィルター、NDフィルターなどを重ねて使っている
- フィルターが厚い
このケラレを防ぐために、お使いのレンズ径より一回り以上大きなNDフィルターを使う事をおすすめします。
Webショップ等でステップアップリングを探すときは、
「ステップアップリング 62mm 77mm」
のようにして検索します。
私の場合、
所有している中で一番レンズ径の大きなものは77㎜なので、
NDフィルターは77㎜サイズで統一しています。
レンズには各々のサイズのステップアップリングを取り付けて、77㎜サイズのNDフィルターを使いまわしできる状態にしています。
濃度 (レンズの濃さ)
フィルターの濃度はさまざまあります。
撮りたいシーンによって使う濃度を選ぶことになります。
濃度固定
数字が大きいほど濃くなります。
色の薄いものだと
ND4,8、16、100、200・・・
色の濃いものだと
ND400、500、1000、10000・・・
一般的な用途としては、
- 色の薄いもの(数字の小さいもの) →滝や水の流れなど比較的短時間の露光で使用
- 色の濃いもの(数字の大きなもの) →雲の流れや街中など露光の長い撮影で使用
濃度が変えられる 可変式NDフィルター
多くが濃度固定のNDフィルターですが、
可変式のものがあり、フィルターを2枚重ねてくるくる回せるようなものです。
回すことで不思議な事に濃度が変化していく便利なNDフィルターです。
K&F Concept 可変式NDフィルター 77mm NDX 減光範囲ND2~ND400 16層マルチコーティング 薄枠設計 KF-CNDX77
可変式NDフィルターは一枚で濃度が変更できてとても便利です。
でも注意点がふたつあります。
- 安いNDフィルターの一部には色ムラや変色が起るものがある
- 回すタイプのため、必要な濃度や今どれくらいの濃度になっているのかわかりにくい
次の人には可変式NDフィルターをおすすめです
- NDフィルター入門用として使ってみたい人 →手軽に様々な濃度で長時間露光が試せる
- 複数枚のフィルターを持ち歩きたくない人 →1枚で複数枚の機能を持つため荷物を減らせる
NDフィルターの楽しさがわかり、本格的に長時間露光などNDフィルターを使った撮影を行うようになれば濃度固定のNDフィルターを揃えた方が良いです。
使い慣れると自分の撮影テーマにあった濃度がわかるようになり、必要な濃度も絞られてきます。
メモ
1枚のフィルターで多くのND効果を味わえる可変NDフィルターは初心者にもおすすめです。
関連するおすすめアイテム
フィルターリムーバー
薄っぺらいフィルターをレンズに取り付けた際、フィルターが外れなくて困ることがあります。
特にフィルターを重ねて使う場合にはさらにその頻度が高まります。
そんな時にフィルターを外しやすくするアイテムです。
ETSUMI フィルタールーズL 60~77mm用 2枚セット E-5035
フィルターケース
NDフィルターを使い始めるとどうしても枚数が増えてきます。
さらにPLフィルターやクロスフィルターなど持っているとなおさらです。
安全に便利にコンパクトに持ち歩く時にあると便利なのがフィルターケースです。
K&F Concept フィルターケース 6枚用(77mm径まで)
レンズキャップ
フィルター径は統一しても 忘れがちなのがレンズキャップ。
私の場合は77㎜用のレンズキャップをレンズの数だけ揃えています。
各カメラメーカーの純正品はもちろん、社外品も数多く販売されています。サイズが同じでしたら問題なく使えます。
アダプターリング
こちらの商品は最近見つけて使い始めたものです。詳しいご案内は別途記事を準備します。
使い勝手の良いアイテムです。
Andoer R-77 77mm カメラレンズ NDフィルター アダプターリング メタル ラピッドフィルターシステム キヤノン ニコン ソニー オリンパス デジタル一眼レフカメラに対応
NDフィルターでの撮影方法
NDフィルターでの撮影って、露出の計算やら難しい知識やらが必要そうで面倒そう・・と言われることが多くあります。
はじめは計算も知識も要りません。
可変式NDフィルターかND200~400前後のものをどれか一枚で十分です。
誰でも簡単にNDフィルターを使った撮影ができる方法をご紹介します。
- 可変NDまたは、ND400前後のフィルターを準備します
- 撮るのは日中の水面や滝などの流れのあるもの ※渓流がおすすめ
- 三脚にカメラをセット
- MF(マニュアル)でピントを合わせた後にフィルターを装着
- Aモード(絞り優先)・ISOは最小・EVは±0 ※慣れたらMモードで
- SSの設定は3~10秒の範囲に収まるようf値を設定
- レリーズリモコンでシャッターをきる
まとめ
NDフィルターの使い始めは「白飛び」や「黒つぶれ」などの写真を連発すると思います。でも諦めずに10枚、20枚と撮っているうちに何枚かは良さそうな写真が撮れていると思います。
一枚撮るたびに設定を確認し、少しづつISOやf値など設定を変えて撮る。この繰り返しで要領がつかめるようになります。
慣れてくると、どんな場面がNDフィルターを使った写真に適しているのかがイメージできるようになります。
ぜひ楽しんでNDフィルターを使ってみてください。
写真撮影の巾が広がること間違いナシです。